慣性閉じ込め核融合
慣性閉じ込め核融合では,燃料をつめた小球に四方から大出力のレーザーや粒
子ビーム等を照射して圧縮し,核融合反応をおこします。燃料のプラズマが膨
張によって吹き飛ばされるまでに,いいかえると慣性によって静止している間
に核融合反応を終了させるためには,十分高密度に圧縮されなければなりませ
ん。
燃料球にレーザーや粒子ビームが入射すると,表面が加熱されてプラズマとな
り回りに噴出します。そのとき燃料球の内部は噴出の反作用で圧縮されます。
これはロケットが燃焼ガスを後ろに噴出しながら前へ進んでいくのと同じです。
この機構を爆縮とよび,この爆縮によって高密度の圧縮が可能になります。
慣性核融合では閉じ込め時間が燃料の膨張時間できまるので,燃料の半径に比
例し,音速に反比例します。音速はプラズマの温度に左右されるため,閉じ込
め性能は燃料の密度と半径の積によって評価されています。
核融合反応による燃料の加熱が損失パワーを上回る点火条件は,
- 密度・半径積 > 0.3 g/cm^2
- 温度 > 5 keV (5千万度)
核融合反応出力が照射に必要なエネルギーを上回る炉条件は,
- 密度・半径積 > 3.0 g/cm^2
- 温度 > 5 keV (5千万度)
と考えられています。
燃料球にエネルギーを入射するレーザーや粒子ビームのことをドライバとよび
ます。大出力と高い収束性を必要とするため,現在はガラスレーザー(最大
30 kJ, 50 TW)が主に使われていますが,より効率の高いエキシマレーザー等
の新型レーザーの開発も行われています。核融合炉を実現するためには
- 出力 〜 1 MJ, 繰返し時間 〜 1 s, 効率 〜 10 %
を満たすドライバの開発が必要です。
大阪大学レーザー核融合研究センターでは,
12 本のガラスレーザー(計 30 kJ)を用いて爆縮実験を行い,
- 密度・半径積 〜 0.1 g/cm^2
- 温度 〜 4 keV (4千万度)
を達成しています。そして固体密度の 600 倍にまで圧縮することにも
成功しています。
Atsushi FUKUYAMA / [email protected]